東京オートサロン2026で話題になった新作ホイールを見ていると、あるひとつの共通点に気づく。「艶がない」のだ。マットブラック、ブラッシュドシルバー、サテンガンメタ——2026年の新作ラインナップを見渡すと、光沢系よりも“艶消し・質感系”の仕上げが圧倒的に多い。ホイール塗装の現場を長く見てきた立場から、このトレンドの背景と、施工者目線のリアルをお伝えしたい。
2026年のホイール、メーカーが「マット系」に舵を切った理由
RAYSの2026年新作ラインナップ、WORKのGnosisシリーズ最新モデル、WEDSのLEONISシリーズ、そしてD.A.Dの22インチ新作と——各メーカーとも今年はマット系・ブラッシュド系のカラーバリエーションを大幅に増やしている。数年前まで「光沢ブラック一択」だったラインナップが、いまや艶消し・半艶系なしでは成り立たないほど変化した。
なぜこの流れが起きているのか。答えのひとつは「SUV化」と「大径化」にある。2026年のカスタムトレンドとして22〜23インチの大径ホイールが一般化しつつあるが、大きなホイールほど光沢仕上げの鏡面感が強調されすぎ、車全体のデザインと喧嘩しやすい。一方、マット・サテン系の質感は主張しすぎず、ボディラインを引き締めながらシルエット全体をまとめる効果がある。結果として「大径で上品に決める」という需要と、マット系の相性が非常に良いのだ。
マット・ブラッシュド・サテン——3種類の「艶消し」は全然違う
ひとくちに「マット系」と言っても、施工する側から見ると3種類はまったく別物だ。
マット(艶消し)
塗膜に微細な凹凸を作り、光を拡散させて反射をなくす仕上げ。コントラストが強く、カスタムの「主張」が最も出る。その反面、傷・指紋・水垢が目立ちやすく、洗車やメンテナンスの方法を誤ると見た目が一気に劣化する。

ブラッシュド(ヘアライン)
金属表面を一方向に研磨し、細かいラインを入れた仕上げ。アルマイト処理や塗装で再現するものもあるが、削り出したものと塗装再現では表面の深みが異なる。金属感と落ち着きが共存する、大人向けのカスタムスタイルと言える。2026年モデルではRAYSやWEDSのラインナップで積極的に採用が増えている印象だ。

サテン(半艶)
マットと光沢の中間。上品な光沢感があり、汚れが比較的目立ちにくい。「マットは管理が大変そう」という方に最初の一歩として薦めやすい。仕上がりのイメージはマットほど尖っていないが、その分飽きがこず長く使えるという利点もある。

施工する側が感じる「マット系のリアル」
実際に現場から言わせてもらうと、マット系の仕上げは「誤魔化しが利かない」仕上げだ。光沢塗装であれば表面の微細な傷や下地の粗さはクリア層でそれなりにカバーできる。しかしマット系はそうはいかない。下地の状態が表面にそのまま出る。
近年マット系仕上げの依頼が増えた分だけ、「仕上がりがイマイチ」という相談も増えている。多くのケースで原因は下地処理の不足と安定しない塗装。脱脂・サンディング・プライマー、この3工程に手を抜くと、どんなに良い塗料を使っても表面の粗さが透けて見える。マット系を選ぶなら、下地処理に通常の1.5倍の時間をかけるくらいの覚悟を持ってほしい。
もうひとつ強調したいのが、完成後のメンテナンスの問題だ。ワックスをかけると艶が出てしまい、マット感が失われる。マット専用のコーティング剤を使い、洗車も柔らかいクロスで優しく拭くことが基本になる。施工後のメンテナンス方法を理解しているかどうかで、長く楽しめるかどうかが大きく変わる。依頼する際には施工店に必ずメンテナンス方法を確認してほしい。

まとめ:2026年のマット系トレンドは「一過性ではない」
マット・ブラッシュド系の流行は2020年代前半から続いており、2026年の各メーカーのラインナップを見る限り、このトレンドはまだ数年は続くと見ている。各メーカーが主力モデルにマット系を組み込んでいる以上、一時的なブームではなくカスタムの定番スタイルとして定着しつつある。
ホイール選びの際に「マット・ブラッシュド・サテンの違いが分からない」という方は、ぜひ実物を見比べてほしい。写真では伝わりにくい質感の違いが、手に取るとはっきり分かる。そして施工を検討している方は、まず下地処理への投資を惜しまないことが成功の近道だ。次回は実際のマット塗装施工手順について詳しく取り上げる予定なので、あわせてチェックしてほしい。
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